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同じ音の波が3つの経路に分かれて進み、それぞれの手前に置かれた同じ形のタイル群を通過したあと、右側で揃い方の違う3本の文字列になって出力される様子。3本のうち一番上だけがほぼ揃い、どの経路にも同じ位置に琥珀色の印が3つ残っている

文字起こしの辞書機能を3つのサービスで比べた|同じ音源・同じ21語で採点

公開: 2026年8月24日

目次
  1. 1. 誤変換は3種類ある
  2. 2. 正解のわかる台本で測った
  3. 3. 辞書だけで48%から86%へ
  4. 4. 「教え方」の仕組みで効き目が変わる
  5. 5. どの辞書でも直らない壁
  6. 6. 残りはAIに見つけてもらう
  7. 7. 要約が信じられるようになる
  8. 8. で、結局どうするか
  9. まとめ

文字起こしの誤変換は、使う言葉を先に登録しておくと減ります。

ただし、効き目はサービスによって倍以上違いました。そして、どのサービスでも直らない語が残ります。

正解が文字でわかっている1分14秒の音源をひとつ用意して、会社でよく使う21語を仕込みました。それを3つのサービスに、辞書あり・なしの6通りで通しています。

結果は48%が86%へ。直ったのは9語。けれど3語だけは、どれでも直りませんでした残った3語をどうするかまで書きます。

運営者satoshiのアイコン 書いた人 サトシ 文字起こしサービスとAIレコーダーをたくさん検証している人

会議と記録に追われている非エンジニアです。音声入力や文字起こしAI、そして文字起こしを要約してくれるAIを使い倒したら、日々の業務がめっちゃ楽になりました。 その手応えから、文字起こしサービスもAIレコーダーも自腹で契約・購入し、同じ音源を入れて結果を見比べています。 音声入力は Aqua Voice を日常的に愛用し、議事録要約の NotebookLM は仕事でもプライベートでも1年以上活用中。 個人情報を扱う仕事柄、セキュリティや運営元の素性は人一倍シビアにチェックします。 このサイトは、その実測ログの置き場です。

使ったのはこの3つです。

  1. 正解が文字でわかる1分14秒の読み上げ音源(台本は本文に全文掲載)
  2. 間違えやすい業務用語21語
  3. PLAUD・OpenAI・Deepgramの3サービスと、それぞれの辞書機能

順に見ていきます。

1. 誤変換は3種類ある

まず、直せるものと直せないものを分けます。

1週間ぶんの実際の会議録音を読み返して誤変換を拾い出したところ、原因は3つに分かれました。

種類辞書で直るか
音源の質が悪い電話越しの声だけが崩れる部分的にしか直らない
言葉を知らない・揺れている社内略語、人名、業界用語直る
話し手が言い間違えた言い直し、噛んだ箇所直してはいけない

辞書が効くのは真ん中だけです。1つめは録り方の問題で、3つめにいたってはAIのほうが正しい。

3つめは実例があります。私の会議録音に「スター線」という意味不明な語が残っていて、最初は誤変換だと思い込みました。音声を確認したら、私自身が言い間違えていただけでした。AIは言い間違いも忠実に書き起こします。

直近の議事録から、間違っている語を3つだけ拾ってみてください。どれに当てはまるかで、打つ手が変わります。

2. 正解のわかる台本で測った

比べるには、正解が確定している音源が要ります。実際の会議録音では「本当は何と言ったか」が推定になってしまう。

そこで、間違えやすい語を21個わざと埋め込んだ台本を書き、それを読み上げて録音しました。全文を載せます。

仕込んだ罠は5種類です。

  1. 難読の人名(石動=いするぎ)
  2. 社内略語(カスサク)
  3. 同音異義語(決裁と決済、保証と補償)
  4. 時刻や日付の言い方(一時半、二十一日の十時半)
  5. 書類名(業務委託契約書、雛形)

とくに「補償ではなく保証の方ですね」という一行は、意図して入れています。音が同じ2語を同じ発話のなかに並べたとき、AIが文脈で区別できるかを見るためです。

この台本なら、正解を推測しなくて済みます。21語のうち何語が正しく出たかを、そのまま数えられる。

社名や部署名を自分のものに置き換えれば、同じ測り方がそのまま使えます。

3. 辞書だけで48%から86%へ

測ったのは6条件です。同じ音源を、辞書あり・なしで3サービスに通しました。

条件正解した語正答率
OpenAI(用語を渡さない)8/2138%
PLAUD(辞書オフ)10/2148%
Deepgram(用語を渡さない)10/2148%
OpenAI(用語21語をpromptで渡す)11/2152%
Deepgram(keytermで21語を登録)14/2167%
PLAUD(カスタム用語に21語を登録)18/2186%

同じPLAUDが、設定を変えただけで48%から86%になっています。録り直していないので、変わったのは辞書だけです。

直ったのは9語でした。

言った言葉辞書オフ辞書オン
与信余震与信
按分案分按分
カスサクカスサブカスサク
所要工数工数所要工数
石動いせるぎ石動
雛形ひな形雛形
第二会議室第2会議室第二会議室
棚卸棚卸し棚卸
定例手入れ定例

「定例始めます」が「手入れ始めます」になっていたのが、登録後は正しく出ています。冒頭の一言なので、直らないと議事録の見出しから狂う場所でした。

ひとつ補足しておきます。PLAUDの設定には「業界の選択」という項目もありますが、今回はこれを未選択のままにしています。業界を指定すると、登録した語以外にも影響が出て、辞書だけの効果が測れなくなるためです。上の9語は、純粋に登録した結果です。

無料プランのまま「カスタム用語」に自社の言葉を登録できる

PLAUD Note を公式サイトで見る

4. 「教え方」の仕組みで効き目が変わる

では、どのサービスの辞書でも同じように効くのか。ここは分かれました。

同じ21語を渡しているのに、直った語の数がまるで違います。

同じ音源に同じ21語を渡したとき、直った語の数をサービス別に比べた図。参考情報として文章で渡すOpenAIのpromptは3語、語として登録するDeepgramのkeytermは4語、同じく語として登録するPLAUDのカスタム用語は8語が直った
同じ21語。変えたのは渡し方だけ

OpenAIの prompt は、AIに「こういう言葉が出ますよ」と伝える機能です。ただしあくまで参考情報で、強制力がありません。リストに「稟議」と書いたのに「倫理」のまま出てきましたし、「決裁」は「決断」から「決済」に変わっただけでした。決済は業務上まったく別の意味なので、直ったどころか厄介になっています。

一方、PLAUDやDeepgramの方式は登録した語を優先して当てにいくものです。だから効きが強い。

副作用も出ました。Deepgramで「笠原」を登録したところ、出てきたのは「笠原所」。余計な字が付いています。強く寄せた結果です。辞書は万能ではありません。

なお、この検証で使ったOpenAI側のモデルは gpt-4o-transcribe です。その後に出た新しいモデルで同じ21語を測り直したところ、直る語が3語から6語に増えました。別記事で追試の結果をまとめています。それでも登録型のPLAUDには届いていません。

自分が使っている道具がどちらの方式かは、設定画面の呼び名で見分けられます。「カスタム用語」「単語登録」「辞書」と書かれていれば登録型。「プロンプト」「文脈」と書かれていれば参考情報型です。いま設定画面を開いて、どちらの言葉があるか確かめてみてください。

5. どの辞書でも直らない壁

21語のうち、3語だけはどのサービスでも直りませんでした。しかも辞書に登録してもです。

言った言葉OpenAIDeepgramPLAUD
決裁決済決算決済
補償(保証との対比)消えた保証消えた
引き継ぎ引き継ぎ引き続き次の

共通点は音が同じか、ほとんど同じことです。

「決裁」と「決済」は、声にした時点で区別がつきません。辞書は「この音が来たらこの字を当てる」という仕組みなので、音が同じなら選びようがない。原理的に無理な相談でした。

もっとはっきり出たのが「保証」と「補償」です。台本にはこう入れてあります。

一件目は保証の範囲を明確にしてほしいという話です。補償ではなく保証の方ですね。

わざわざ言い分けているのに、3サービスすべてがこの対比を潰しました。「保証ですね」で終わったり、両方が「補償」になったり。話し手が念を押した部分ほど、テキストからは消えていました。

しかも、両方を辞書に登録したことが裏目に出ています。どちらを選ぶかの判断材料が増えないまま、候補だけが2つになるからです。

つまり、辞書を育てても越えられない線があります。ここから先は別の方法が要ります。

6. 残りはAIに見つけてもらう

音で区別できないなら、文脈で判断するしかありません。これは人がやるか、AIに頼むかの二択です。

私が使っているのは後者です。文字起こしを受け取ったあと、ChatGPTやClaudeにこう頼みます。

この文字起こしから議事録を作ってください。発話にあることだけを書き、推測で補わないこと。文脈と合わない語には #要確認 を付けて残してください。

こうすると、AIが「決済」を見て「稟議の話なのに決済は変では」と引っかかり、印を付けて残します。直してしまうのではなく、判断を保留した状態で渡してくるのがポイントです。

そして、この印が溜まっていくと副産物ができます。

  1. AIが #要確認 を残す
  2. 印の付いた語だけを見て、正解を判定する
  3. 判定した語を辞書に足す
  4. 次の録音から、その語は上流で直る

何を辞書に入れるべきかを、思い出さなくてよくなります。現場で実際に間違えた語だけが、証拠付きで溜まっていくからです。

辞書に入れて潰せるものは潰し、潰せないものはAIに拾わせる。役割を分けると、どちらも軽くなります。次に議事録をAIに作らせるとき、上の一文を足すだけで試せます。

7. 要約が信じられるようになる

辞書の効果は、文字起こしだけで終わりませんでした。

同じ音源のAI要約を、辞書あり・なしで比べています。

項目辞書オフの要約辞書オンの要約
決裁の日2026年8月18日に決済された火曜日に決裁済み
資料の期限今週中(2026年8月28日まで)今週中に取りまとめる
次回会議2026年8月21日の10時半21日10時半

辞書オフのほうは、音声のどこにも存在しない日付を3か所で作っています。「火曜」としか言っていないのに「8月18日」と確定させ、「今週中」を「8月28日まで」と言い切っている。

これは要約が嘘をついているのではありません。手元のテキストが不確かなほど、AIは辻褄を合わせようとして推測で埋めます。上流が曖昧だと、下流が創作を始める。

辞書で上流を固めたら、その創作が消えました。

誤変換を減らす価値は、直す手間が減ることだけではありません。要約を信じられるようになって、全文を読み直さなくてよくなることのほうが大きい。

30分の会議の文字起こしを頭から確認すると、7分から8分かかります。要約だけ見て済むなら1分から2分。週に5本あるなら、それだけで週30分ほど変わります。

登録にかかったのは10分でした。

8. で、結局どうするか

使う頻度で判断が変わります。

週に1本か2本なら、いまの道具のままで十分です。乗り換えを検討する前に、設定画面を開いて20語を登録してください。自社名、取引先の社名、部署名、社内略語、同僚の名字。それだけで今回と同じくらいの改善が見込めます。かかるのは10分です。

毎日録るなら、話が変わります。無料プランの文字起こし時間はすぐ足りなくなる。私が使っているのは月300分のプランですが、1時間の面談ひとつで70分近く消えました。上位プランか、使った分だけ払うAPI直も選択肢に入ります。

そして道具を選び直すなら、判断材料をひとつ増やしてください。

その道具に辞書機能があるか、そして登録型かどうか

精度をうたう文言よりも、こちらのほうが実際の差になって出ます。今回、素の状態では48%で並んでいたPLAUDとDeepgramが、辞書を入れたあとは86%と67%に分かれました。同じ21語を渡しているのにです。

毎週おなじ固有名詞を手で直しているなら、登録は一度で済む作業です。

今回いちばん辞書が効いたサービス。無料プランでも登録できる

PLAUD Note を公式サイトで見る

まとめ

  1. 辞書は効く。同じ道具・同じ音源で、設定だけで48%から86%
  2. 効き目は方式で変わる。登録型が8語、参考情報型が3語
  3. 音が同じ語は、どの辞書でも直らない
  4. 直らない語は、AIに #要確認 で拾わせて辞書に還す
  5. 本当の見返りは、要約を信じられるようになること

まず設定画面を開いて、自社名だけでも登録してみてください。次の録音から結果が変わります。

文字起こしの精度を上げる方法では、辞書以外の手(録る位置を変える、長い録音を分ける)もまとめています。あわせてどうぞ。

よくある質問

辞書に登録すれば、誤変換はなくなりますか?

なくなりません。今回21語を登録して測ったところ、誤りは11語から3語に減りましたが、ゼロにはなりませんでした。残った3語には共通点があります。「決裁」と「決済」、「保証」と「補償」のように、音がまったく同じ語です。音で聞き分けられない以上、辞書でも区別できません。辞書が効くのは「音は正しく聞き取れているのに、字が違う」種類の誤変換です。

サービスによって辞書の効き目は違いますか?

はっきり違いました。同じ音源に同じ21語を渡して比べたところ、直った語の数はPLAUDのカスタム用語が8語、Deepgramのkeytermが4語、OpenAIのpromptが3語でした。同じ語を渡しても、渡し方の仕組みによって効き目が倍以上変わります。登録した語を優先させる「辞書登録型」と、参考情報として渡す「プロンプト型」の違いです。

何語くらい登録すればいいですか?

まず20語で十分な効果が出ます。今回は21語を登録して、正答率が48%から86%まで上がりました。登録にかかった時間は10分ほどです。自分の会社名、取引先名、部署名、よく使う社内略語、同僚の名字を書き出せば、20語はすぐ埋まります。上限はサービスによって違い、Deepgramは1回のリクエストにつき500トークンまで渡せます。

辞書を使うと要約も良くなりますか?

今回は良くなりました。辞書なしの状態では、要約が「2026年8月18日に決済された」と、音声には存在しない日付を書いていました。辞書ありでは「火曜日に決裁済み」と、話した通りになっています。文字起こしが不確かなほど、要約は推測で埋めようとします。上流を直すと、下流の創作も減りました。ただし要約が推測を足す性質そのものは消えません。

無料プランでも辞書は使えますか?

今回検証したPLAUDでは、無料のStarterプランのまま「カスタム用語」を使えました。設定画面から用語を登録し、トグルで有効にするだけです。ただし文字起こしできる時間には月ごとの上限があり、Starterは月300分です。辞書の利用そのものに追加料金はかかりませんでした。